掛軸や屏風などの表具・表装に使われる糊には様々な種類があり、作り上げられる工程によって使い分けられる事があります。

こちらでは、表具・表装に使用される糊の種類についてご紹介いたします。

新糊

小麦粉に含まれるグルテンを取り除いたものを小麦デンプンといい、小麦デンプンに水を加え煮て作られた糊です。作ってすぐに用いられるため、古糊と対比させて新糊と呼ばれます。接着力が強く乾燥すると硬くなる性質があり掛軸、襖、屏風などあらゆる表具の制作に使用されます。

古糊(寒糊)

着力を弱めた小麦デンプンの糊です。大寒の頃(一月二十一日前後)に炊いた糊を甕に入れて水を貼り、床下等の冷暗所に保存して10年程寝かせた物を言います。
掛軸などの軸装を柔軟に仕上げる事ができ、剥がしやすいため、修理がしやすくなるという利点が特徴です。そのため表具を扱う上で重要な接着剤といえます。主に掛軸の増裏打ち、中裏打ち、総裏打ちなどに使われます。糊の炊き方、保存方法、貯蔵する年数などは糊を作るお店によって違いがあります。

正麩糊(しょうふのり)

小麦粉から分離されたデンプン粒子に含まれる、正麩と呼ばれる小さな粒子で作られた糊です。粒子の大きさは約2~10ミクロンであり、粘度が低くサラサラしている事が特徴です。

また、分離された成分の中で大きな粒子を用いて作られた糊を沈糊といいます。正麩糊と沈糊は異なるものですが京表具では沈糊の事を正麩糊と呼んでいたともいわれています。

化学糊

化学的に合成して作られた糊であり、昭和三十年頃から古糊の特徴を生かした化学糊として京表糊や片岡糊が使用されるようになりました。現在では湿式と乾式のものがあり、天然材料であるデンプン糊と比較すると乾燥しやすく製作時間が短縮できるという点や、湿度による狂いが生じにくいという利点があります。