お部屋に飾る大事な絵画や美術品としての価値が高い巻物、ご家族の大事な写真は、劣化させる要因からなるべく遠ざけたいものではないでしょうか。

こちらでは掛軸や額装の劣化予防の為に知っておきたい劣化要因をご紹介します。

紫外線

日焼けは美術品を修理する理由として定番ですが、紫外線は美術品を劣化させる大きな要因ともなります。
そもそも紫外線とは太陽光線の1つですが、蛍光灯等の光にも含まれています。太陽からの日射は紫外線・赤外線・可視光線があり、波長の違いによって分けられます。
紫外線には絵の具や染料のインクを退色させてしまう効果があります。直射日光が当たる部屋に表具や美術品を配置するならば、UV(紫外線)カットのアクリル保護板が入った額装などの保護を行った方が美術品を劣化から守る事が出来ます。

害虫

掛け軸などの美術品にとって、害虫による被害は絶対に避けたいものです。表装に使用されている和紙や糊等を好んで食べてしまう虫もいます。
紙を食べてしまう虫は死番虫などを挙げる事ができますが、京都は木造家屋も多いので住み着きやすいエリアの1つかも知れません。
桐は昔から防虫効果がある木材として知られているため、防虫香や防虫剤を使わない美術品の防虫方法としても有効です。掛軸や巻物、和本等はなるべく専用の桐箱へと収納する様に心がけましょう。

灰汁(アク)

紙や木材など植物由来の素材を使っている美術品などは、灰汁による劣化も心配です。
灰汁は元々植物が草食動物に食べられないようにするための防御システムなので、紙に描かれた絵や木像の美術品であれば避けられない劣化です。数十年に一度、表装の修復を行う事で、灰汁による劣化を最小限に留める事も重要です

酸性、アルカリ性

表具・表装に使用されている和紙の性質も、美術品を劣化させる要因に大きく関わっています。
和紙はとても耐久性に優れた紙ですが、和紙の性質が酸性か、中性かでその耐久性も大きく変わってきます。酸性の和紙の耐久性が50年から100年と言われていますが、中性を保ったままの和紙ではその耐久性は4倍から6倍もあると言われています。
和紙は紙を漉く行程で弱アルカリ性の性質を持ちます、残念な事に掛軸等は空気と触れ続ける事で少しずつ酸性と変化していき、茶色く変色してきます。酸化が進むと極度に耐久性が落ちてしまい、脆く破れやすくなってしまいます。
この為にも掛軸や額装等の表具・表装は50年から100年に一度の修復が必要とされています。当店では表具・表装の修復を行う際は修復後の本紙の性質が弱アルカリ性となるように処理しています。
また、掛軸や巻物等は桐箱へと収納して保存する事が一般的ですが、美術館や博物館、資料館等の湿度管理が適切にされており、害虫対策もしっかりしている所では美術品を中性子ボードで作られた保存箱に収納している所も多いです