表木(半月・八双)について

掛軸の一番上に付いており、紐を取り付ける為の金具(カン)を打ち込んだりする棒を「表木(ひょうもく)(または「半月(はんげつ)」・「八双(はっそう)」)」と呼びます。
何故、呼び方がいくつもあるのでしょうか。

形について

現在の掛軸に付いている「表木(ひょうもく)・半月(はんげつ)・八双(はっそう)」(以下、「表木」と表記)の形は、断面が蒲鉾形です。

しかし、江戸中期以前の物は断面が三角形の物があり、掛軸の修復を行っていると稀に三角形の表木が付いている物があります。

大きさは掛軸の大きさに合わせて変わりますが、基本的には軸先・軸棒の太さに合わせて変わります。

表木

呼び名の種類ついて

一般的には「表木(ひょうもく)」「半月(はんげつ)」と呼ばれていますが、「八双(はっそう)」と呼ぶ事も多いです。

何故、いくつも呼び名があるのでしょうか?

いろいろと調べてみても、この呼び名の由来についてはほとんど書かれておらず、はっきりとした事はわかりません。

以下は当店で調べてわかったことを、当店の解釈でまとめた内容となります。

「表木(ひょうもく)」という呼び方は、掛軸を巻いた時に一番、表(おもて)に来る事から「表木」と呼ばれたのではないかと思われます。
逆に、掛軸の一番下に取り付ける棒を「軸棒(じくぼう)」と呼びますが、掛軸を巻く時に中心の「軸」となる事から「軸棒」と呼んだのではないかと思われます。

次に「半月(はんげつ)」という呼び方ですが、これはこの形状からそのまま「半月」と呼んだのでしょう。

表木の形状

「八双(はっそう)」という呼び方について

最後に「八双(はっそう)」という呼び方についてですが、この呼び方が一番疑問ではっきりとした事がわかりません。

「八双」という漢字の他にも「発装」・「八相」という書き方をする事もあるようです。また、「八相」というのは剣道の構えの形の一つにもあります。

「八双」という漢字では、「八双金物」という物もあり、これは寺院等の門等に多く見られる。装飾を施す金具の事です。

八双金物

掛軸の中でも仏画や御名号等の佛表装には軸先に金軸が使われている事が多く、金軸が付いている場合は掛軸の一番上の左右、表木の両端に金軸と同じ素材の飾り金具が付きます。

この金軸用の飾り金具ですが、よく見ると先程の八双金物と形がよく似ている事に気づきます。

また、大辞林には「発装(はっそう)・・・仏画などの表装に使う装飾金具。八双金物に形が似る。」と書かれていました。

以下も推測となるのですが、上記の事から本来「八双(はっそう)」という呼び名は「表木」や「半月」の別名ではなく、金軸と共に取り付ける装飾用の金具の事を呼んでいたのではないかと思います。

それがいつからか、「表木」「八双」の使い分けが有耶無耶となり、「表木」「半月」「八双」が同じ意味で使われる様になってしまったのかもしれません。

金軸用の飾り金具