表具・表装の修復

当店では掛軸、額、巻物、屏風、襖、衝立等の表具・表装の修復・修理も専門的に行っており、年間で250点以上の表具・表装の修復を手掛けております。

掛軸などの表具・表装は使用頻度や環境、保存方法等によって違いはありますが、折れや破れ、汚れ等の傷みが見かけ上無くても一般的に50年から100年で修復を行うのが良いとされています。
これは表装に使用されている糊の粘着力が弱くなり、裏打ちに使用されている和紙が剥がれやすくなっていたり、和紙や裂地そのものが経年劣化によって強度が弱くなってくるためです。
見かけ上、傷みが無いように見えていても、裏打ちの和紙の接着が弱くなり本紙や裂地の強度を高めている和紙が浮いてくると、そこから一気に劣化が早まり、変色や破れ、折れ等が発生してしまいます。

汚れや破れ、折れ等を修復する事で再び掛軸等の表具に仕立て直す事は可能ですが、それでも一度劣化してしまい、破れや折れが出来てしまった部分は元通りにはなりません。
修復の際に補強を行っても、他の部分よりは痛みやすく、次の修復必用時期が早くなってしまうのです。

古い裏打ち和紙の剥離、除去

表具・表装の修復には専門的な知識や特別な道具、長年の経験や技術を必要とします。
古くなり、傷んだり汚れてしまった掛軸、額、巻物、屏風、襖、衝立等はそれぞれ作品に使われている材料(紙・絹・麻・綿等)、傷み具合(破れ・折れ・虫喰い穴)や汚れの種類(煤汚れ・雨染み・カビ等)が全て違います。
それぞれの痛み具合や汚れの種類を的確に判断し、それぞれに適した修復方法を考え、行う知識・技術が必要なのです。

ひどいシミが出来ていたり、折れたり破れたりの破損が発生していると、修復・修理出来ないものと考え処分してしまわれる方も多くおられます。

しかし、豊富な知識と経験、高度な技術を持った表具師・修復師の手にかかれば、どんなに痛んでしまったものでもほとんどの物が修復・修理可能です!

酷く傷んだ掛軸

また、今までは難しかった水彩画の染み抜きやカビ除去等、また、西国三十三ヶ所巡礼や四国八十八ヶ所(お遍路)等の朱印巡り等の墨汚れや朱肉汚れ、印の押し間違いや書き間違いの除去等も、現代の技術では可能です。(素材等によっては難しい物もあります。)

御客様の大切な掛軸や額・屏風等の財産を安易に処分してしまわずに是非一度、当店に御相談下さい!

また、同業者の方の御相談も多く御受けしております。修復・修理でお困りのある業者様も是非一度、当店へ御相談下さい。

『修復事例』のページで当店で今までに行った修復事例の一部を紹介しています。
是非一度、御覧下さい。

折れ伏せ作業の様子

修復方法・技術の紹介

傷んだり汚れてしまった掛軸、額、巻物、屏風、襖、衝立等の修復方法や修復技術の一部を御紹介させていただきます。

裏打ち紙の剥離・除去

裏打ち紙の剥離・除去

作品の裏に裏打ちされている紙(糊で貼られている紙)を出来るだけ少ない水分で少しずつ丁寧に剥がしていきます。
作品(本紙)の洗い

作品(本紙)の洗い

蒸留水をかけながら作品に付いた汚れやアクを丁寧に取り除いていきます。
薬品による作品(本紙)の洗い

薬品による作品(本紙)の洗い

特別な薬品を何種類も使い分け、シミやカビ・頑固なアク等をそれぞれ丁寧に取り除いていきます。
薬品による洗いを行った後はしっかりと薬品を中和し、丁寧に水洗いを行った後、本紙自体が弱アルカリ性の性質になる様に処理します。
裏打ち作業

裏打ち

作品の裏に蒸留水で薄めた糊で美濃紙を貼ります。
修復の場合はそれぞれの作品に適した色合いに和紙を染めて裏打する事もあります。
折れ伏せ作業

折れ伏せ

作品についた折れクセや割け目等、掛軸に仕立てて巻いた時に折れが出る部分に一つづつ丁寧に細く切った和紙で補強していきます。
専門の絵師による補彩・追墨

補彩・追墨

経年劣化に伴い絵具が剥落してしまったり、虫に喰われて無くなってしまった部分を専門の絵師が彩色します。
テープ跡の除去

テープ跡の除去

テープ等が貼られていた部分の粘着成分が硬化し、経年劣化により変色している部分の粘着成分を除去し、本紙の変色も薬品を使用して除去します。