床の間を飾る掛軸は、私たちにとって身近な存在です。しかし、意外と知られていない基礎的知識が多いものです。始めて掛軸を利用する方は、分からない事も多くあるかと思います。
こちらでは、掛軸をより楽しんでいただくために役立つ基礎知識についてお伝えします。
最初に揃えておきたい掛軸
掛軸には、季節に関係なく飾れる「年中掛け」や、季節に合わせて飾る「行事用」などの種類があります。まずは、「年中掛け」を2本揃えて、60〜120日ごとに交互に飾る事をおすすめします。交互に使う事で、掛軸がより長持ちします。また、慶事と正月の兼用として「鶴亀松竹梅」や「松竹梅高砂」・「七福神」等を、法事・弔事用として「六字名号(南無阿弥陀仏)」等の佛表装を用意します。この四種類の掛軸を揃え、用途によって掛け替える事で年中床の間に掛軸を飾り愉しむ事が出来ます。
「年中掛け」(例):「富士山」「山水画」「寅」「昇り鯉」「竹図」「四君子(蘭、竹、菊、梅の書かれた図)」季語の入っていない「禅語」など。
季節に合わせて揃える
掛軸は、一般的に床の間に飾られる事が多いと思います。しかし、季節が変わっても同じ掛軸が飾られていると、少し寂しい気持ちになるものです。季節が変わる度に、その季節に合わせた掛軸にする事で、掛軸の魅力をより味わう事ができます。また、掛軸には様々な種類の図柄があります。その図柄にも、また色々な意味が込められているのです。お子様やお孫さんが喜んでくれるようなデザインもございますので、季節や節句に合わせて気に入った掛軸を徐々に揃えていくと良いでしょう。
(例):「梅図」「桜図」「牡丹」などの季節の花や鳥を描いた「花鳥図」や、季語の入った「禅語」など。
適切な道具で手入れを行う
掛軸を取り替える際には必ず手入れを行い、汚れを落としてから保管するようにします。重要なポイントは、専用の道具を使う事です。手入れの際に最低限必要な道具は、「羽根ばたき」・「矢筈(やはず)」です。まず、金具から掛軸を外す時は矢筈を使って外します。仕舞う際に掛軸を巻き上げる時、表面に付着したホコリ等は、羽根ばたきで軽く払うようにして落とします。そうする事で桐箱に仕舞っている間に不純物が原因で掛軸を劣化させる可能性が低くなり、掛軸を良い状態で長期保存する事が出来ます。掛軸は一般的に、50年から100年に一度、修理・修復が必要とされています。
古い掛軸を再生活用
押入れや蔵等に仕舞いっぱなしになってしまい、経年による傷みがひどい掛軸も、表具師・修復師の手で修復・表装し直す事で美しくよみがえります。安価な粗悪品を購入するよりも、家の押入れや蔵等に眠っている掛軸を修復し活用されてみてはいかがでしょうか。当店では数多くの表具・表装の修理・修復を行っております。シミや破れ・カビ・折れがあっても安易に諦めて処分してしまわず、是非一度ご相談下さい。