日本が誇る伝統文化の一つ「掛軸」のファンは日本中にたくさんおられます。また、世界中にも多くの方々に好まれております。代々受け継がれてきた家宝として、大切に守っているご家庭も多いでしょう。自慢のコレクションや、お気に入りの掛軸をカビから守るためには、カビ防止対策が必要です。

ここでは掛軸をカビから守る為に注意しなければいけない点等をご紹介いたします。

掛軸に発生したカビ

壁のカビに注意

トイレ、風呂、洗面所、日の光が当たらない北側の部屋など、湿気の多い場所や、風通しの悪い場所にカビは発生します。掛軸を掛ける床の間、掛軸を掛けている面にカビが発生すると、それが掛軸に移ってしまいます。大切な掛軸を守るためには、壁のカビに要注意です。

壁にカビを発見したら、アルコール類(エタノール等)を吹きかけて除菌し、拭き取る事をおすすめします。壁面のカビが酷い場合は工務店等にも相談し、根本的に壁面のカビの処理も考えた方がいいでしょう。大切な掛軸を傷めないためにも、カビ取り剤等で掛軸を拭く事は絶対にしないで下さい。

湿度について

カビは湿度が50%以上で繁殖をはじめ、60%を越えると急激に繁殖をはじめます。この条件を満たすと、梅雨の湿気が多い時期でなくともカビは発生します。

意外と知られていないのが、睡眠中に湿度が上昇するという事です。ドアや窓が閉められている就寝中は、密室空間が作りだされます。

8時間の睡眠で、一人およそ400gの汗をかくのをご存じでしょうか。この汗が、睡眠中に水蒸気となって室内に充満していくのです。朝起きたら窓を開けて風を通し、換気をする事で、カビを予防する事にも繋がります。寝室に掛軸を掛けておられる方は少ないと思いますが、掛軸を飾っている部屋は特に、湿度計を設置する等、しっかりと湿度管理を行うように心がけましょう。

掛軸にカビが発生したら

箱に入れていても、お手入れをせずに長期間掛軸を放置していると掛軸にカビが発生します。桐箱は防虫・防湿に優れていますが、それでも仕舞いっぱなしにする事はよくありません。

また、雨漏りが原因で掛軸にカビが発生するケースも多いようです。カビには種類がありますが、特に黒カビを見つけたら要注意です。黒カビを放置しておくと、みるみるうちに繁殖していきます。

掛軸にカビを見つけたら、すぐに対処したい気持ちにかられますが、自分で取り除く事は困難です。大切な掛軸を傷めないためにも、修復を行える表具師・修復師へカビの除去・修復仕立て直しを依頼する事をおすすめします。

カビは発生してから時間が経つ程頑固になり除去しにくくなります。なるべく早い段階で除去してやる事で作品にも負担をかけずに除去する事が可能です。カビを発見したら放置せず、なるべく早めに御相談下さい。